Factory Automation

海外レポート

智能製造の中核拠点設立を三菱電機が支援

2017年8月公開

「世界の工場」とも称される中国の中でも、特に江蘇省常熟市にはグローバルレベルの大手製造業がこぞって進出する地域として知られています。大消費地の上海に比較的近い割には広い土地が整備されており、長江(揚子江)から海運も利用可能な点などが、常熟に製造業が集まる要因です。常熟市の中でも特に先端的な製造業が集まる常熟高新技術開発区には、約350社の外資系製造業が進出。日本企業も大手自動車メーカーなど約60社が生産拠点を設けています。

その常熟高新技術開発区にこのほど設立されたのが、「常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター」です。製造業の高度化を推進するために、高度の生産技術やノウハウを持つ企業や大学、研究機関などが連携し、技術や研究成果の発信や人材育成などを行う施設として設けられたものです。中国は2025年を目標に製造業の高度化をはかるプロジェクト智能製造を進めており、その中核拠点としても期待されています。

このセンター開設に大きく貢献しているのが三菱電機です。センターを訪れる中国製造業関係者向けに設けられた協力各社の展示コーナーのうち、三菱電機は最大面積の展示を展開。ロボットやサーボモータ、シーケンサや省エネ機器などe-F@ctoryソリューションを披露し、智能製造を支援する立場として大きな存在感を示しています。

常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター内に最大規模で設けられたe-F@ctoryの展示コーナー

常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター内に最大規模で設けられたe-F@ctoryの展示コーナー

常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター内に最大規模で設けられたe-F@ctoryの展示コーナーは、開設式典でも参加者の関心を集めていた

こうした大規模な展示が可能になった背景には、三菱電機と常熟市との密接な関係があります。三菱電機は2011年に常熟市にFA機器の生産拠点を立ち上げ、中国の製造業向けにシーケンサやサーボ、NCなどを生産してきました。製品供給だけでなく調達も通じて、常熟市を始めとした中国各地の製造業と連携。2016年には常熟市と戦略的パートナー契約を締結し、常熟市と信頼関係を構築してきたことが、センターへの大規模な展示コーナー開設に至った大きな理由です。

開設式典でトップを切って講演

2017年7月11日、同センターの開設式典が行われました。式典には市の幹部や製造業関係者、展示コーナーで協力するベンダ各社の関係者などが数多く参加しました。式典では、智能製造を視野に入れて打ち出されているさまざまな政策の一つに同センターの開設があり、イノベーションと人材育成の拠点として智能製造のモデルを作っていくことや、そのモデルを中国全土へ発信し、国際競争力向上に取り組むことなどが説明されました。

7月11日に行われた常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンターの開設式典

7月11日に行われた常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンターの開設式典

7月11日に行われた常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンターの開設式典

開設式典で講演するFAシステム事業本部副本部長の高橋俊哉
開設式典で講演する三菱電機執行役員FAシステム事業本部副事業本部長の高橋俊哉

続いて展示コーナー開設で支援しているベンダ各社の担当者が、それぞれのソリューションについて講演しました。トップを切ったのは、最大の展示スペースを持つ三菱電機執行役員FAシステム事業本部副事業本部長の高橋俊哉です。高橋は三菱電機が中国に33社の現地法人を構え、FA分野だけでも上海の現地法人本社を含め13の支社・サービス拠点と約660人のスタッフ、約150の代理店を通して、中国で積極的に事業を展開していることを紹介しました。

その体制をもとに、智能製造実現を支援する三菱電機の具体的な戦略として、e-F@ctoryを推進するパートナー組織「e-F@ctory Alliance」の中国版を、80社以上の中国パートナー企業とともに2015年12月に立ち上げたことや、中国の国家標準取得を進めていること、2016年9月には智能製造を推進する国の機関の担当者を日本に招き、視察に案内したことなどを説明。「理想像だけを追い求めるのではなく現実を踏まえたソリューションを、当センターを起点に展開し、智能製造の実現へ向けて常熟市と協力していきます」と抱負を語りました。

智能製造という国家的なプロジェクトの推進施設となる同センターの開設に、三菱電機が大きく寄与していることに対する関心度は高く、式典後には中国メディア各社による取材も受けました。ここでは高橋は中国の製造業に対する分析と、その高度化のために何を行うのかを具体的に説明しています。

式典後には中国メディア各社による取材も受け、多くの方が展示コーナーに訪れた

式典後には中国メディア各社による取材も受け、多くの方が展示コーナーに訪れた

式典後には中国メディア各社による取材も受け、多くの方が展示コーナーに訪れた

「中国の製造業は投資に対してすぐにリターンを求めようとして、個別最適に走る傾向があります。ものづくりの高度化を進めるには業務プロセスを整備し、バリューチェーン全体を俯瞰しながら全体最適化をはからなくてはなりません。そのためにはお客様が描く将来像や理想像を議論し、課題の抽出から解決法の発見まで一貫してサポートする必要があり、当社が持つ生産ノウハウを基にしたコンサルティングやシステム設計、ライン導入支援がその役に立つと考えています」(高橋)。

三菱電機は今後、常熟の工場を増強する形で3月に竣工した第二工場などを活用し、段階的に生産体制を強化していく計画で、中国市場へのe-F@ctoryの浸透をさらに推し進めていく方針です。

一覧に戻る