海外レポート

コンテストを通じて中国のロボット技術者を育成
2018年3月公開
中国教育部の高等学校電気類教育指導委員会と中国自動化学会が主催して行われるこの大会には、三菱電機は2007年の第一回大会から後援しており、大会名にも「三菱電機杯」と冠がついています。電気工学やロボット技術を研究する大学生の参加者に共通のテーマが与えられ、それを解決するシステムを三菱電機が提供するロボットや制御システムなどで構築してもらい、成果を競う大会です。
参加チームには一定の時間が与えられ、テーマに沿ったシステム構築に挑みます。完成したシステムをそれぞれのチームが披露し、プレゼンテーションを実施。その内容を大学教授や研究員など10何人の審査員が評価し、優秀なものに対して表彰が行われる仕組みになっています。表彰の中には「企業特別賞」として、三菱電機の本社と制作所へ訪問し、日本のものづくり見学の機会が与えられます。また各チームが開発したシステムは大会後そのまま各学校に持ち帰り、日頃の研究活動に応用できるなど、継続的な人材育成に寄与しているのもこの大会の特徴です。
第11回の開催となった2017年8月の大会は天津大学で開催され、天津大学、浙江大学、東北大学など中国内48の教育機関から74チームがエントリーしました。大会は主催者の教育部高等学校電気専門教育運営委員会メンバーで南京師範大学党秘書室の胡敏强氏と、三菱電機自動化(中国)有限公司の事業戦略企画本部長の水嶋一哉がそれぞれ挨拶し開幕。参加チームにはテーマとして「PLC定位制御システム」「工業用ロボット制御システム」「マイクログリッド制御システム」が与えられました。智能製造が中国の製造業にとって大きな関心事となっていることを受けて設定されたテーマで、三菱電機のFA製品やITを組み合わせて、製造業のさまざまな業種に応用可能なシステムの構築に挑みました。

大会会場で課題に取り組む各チーム
大会は既に11回を数えていることもあって、各チームの三菱電機のロボットなどに対する知識は相当なものです。その豊富な知識と学生の自由なアイデアから生み出されたシステムはいずれもユニークなものばかりでした。ここではその一部を紹介します。
インテリジェントなコーヒーマシン
まず、今回「企業特別賞」受賞された天津大学「夢のチーム」を紹介します。彼らが開発したこのシステムは、コーヒーマシンにロボットや搬送装置などを組み合わせたものです。ユーザがAR設備を着用して注文します。注文内容に合わせてコーヒーを用意するのはもちろん、コーヒーの予約や支払い、指定した場所までの搬送などもe-F@ctoryで自動化しています。最大の特徴は、AR設備でユーザの脳波を読み取って最適なメニューを自動的に提案してくれる機能です。ユーザの嗜好や気分に合わせてコーヒーを提供するインテリジェントなシステムを目指しています。
自動検査システム
浙江大学「浙江海岸チーム」が開発に挑んだのは、製品の検査業務を自動化するシステムです。手作業による検査を三菱電機のFA技術を使って自動化し、検査情報を自動的にデータベース化する機能を実現しています。検査担当者用のインタフェースとして使っているのは、三菱電機の表示器「GOT2000シリーズ」です。
スマートなゆりかご
撫順工科大学チームは、乳児をあやすゆりかごにインテリジェントな機能を持たせました。ゆりかごを揺らす人間の腕の動きを三菱電機の制御技術で再現。5つの揺らし方を可能にしています。ゆりかご同士をオープンネットワークのCC-Linkで接続し、同時に揺らし方を制御する機能も実現しています。
FA技術を応用した自動調理システム
外食産業の省力化を推進するシステム開発に取り組んだチームも相次ぎました。南京Xiaozhuang学院「Xingzhiチーム」はラーメンを調理するシステム、ハルビン工科大学「ダイヤモンドチーム」は自動で鍋を加熱して調理するシステム、天津工科大学「C504チーム」は自動でピザを焼き上げるシステムをそれぞれ展示しました。
プレゼンテーションと審査の後、優秀なシステムに「一等賞」や「企業特別賞」「CC-Link特別賞」などが与えられました。本大会は2018年にもハルビン理工大学で開催される予定です。
- 要旨
- コンテストを通じて中国のロボット技術者を育成