Factory Automation

海外レポート

中国智能標準化フォーラムで、
三菱電機ならではの智能製造実現手法を紹介

2018年7月公開

SACとその傘下のITEIは、ともに中国の標準規格策定で大きな役割を担っています。中国国内だけでなく、世界各国の機関が集まって産業分野の国際規格を取りまとめるIEC(国際電気標準会議)に中国代表として参画。世界中の製造業がこぞって生産拠点を進出させる「世界の工場」とも称される中国の意向は、製造業の国際規格策定に一定の影響力を持ちます。そのためSACやITEIの動向も大きな関心を集めています。

中国の製造業は現在、ものづくりに情報化と自動化を積極的に取り入れる「智能製造」の実現を目指して活動中です。ITEIは中国製造業のハイレベル化を推進する立場から、施設内にマスカスタマイゼーションを始め、智能化のコアとなる10の課題を検証するモデルラインプラットフォームを開設するなど、智能製造の具体的な旗振り役としてさまざまな施策を展開しています。2018年に第17回目の開催を迎えた智能標準化フォーラムもその一つです。智能製造を早くから支援してきた三菱電機はITEIのパートナとして、モデルラインプラットフォームにe-F@ctoryのシステムを提供するほか、国家プロジェクトに直結したテーマを扱う智能標準化フォーラムでも前段の講演を任されるなど、SACやITEIと密接な関係を築いています。

現場改善を進めれば半自動化でも生産コストは半減


カンファレンスには中国の製造業関係者約500人が参加

2018年の智能標準化フォーラムは、「高品質・高効率・安全・セキュリティと智能製造」をテーマに、北京市内のホテルに約500人の中国製造業関係者を集めて行われました。三菱電機はこの前半のプログラムでe-F@ctoryを紹介する講演を行っています。


カンファレンスには中国の製造業関係者約500人が参加


智能標準化フォーラムで講演する
三菱電機(中国)有限公司董事長兼総経理の富澤克行

講演したのは三菱電機執行役員中国総代表で、三菱電機(中国)有限公司董事長兼総経理の富澤克行です。富澤は講演の冒頭で、「現状のものづくりを変えずに自動化だけ取り入れても、真の智能製造は実現できません」と強調。自動化や情報化は単なる手段の一つに過ぎず、その前に目標を明確化し、現状を最適化することが必要と説きました。


智能標準化フォーラムで講演する三菱電機(中国)有限公司董事長兼総経理の富澤克行

具体例として富澤は、中国のある電子機器製造会社の事例を紹介しました。ここでは当初、1ラインあたり8人で行っている作業を、自動化システムを使って2~3人にしたいという要望を持っていましたが、三菱電機は敢えて自動化システム導入から入らず、最初に現場の作業そのものを分析することに着手。すると作業の順番や検査のやり方などに改善すべき点が見つかり、完全な自動化システムではなく、作業の管理方法や治具の改善を行いながら半自動化システムで発展を目指すことを提案しました。その結果、作業者を減らさなくても生産コストは半減することができ、顧客は2年でその投資を回収できたとのことです。

富澤は情報化についても言及。IoTで生産現場からデータを収集することに取り組む製造業は増えているものの、「点のデータを集めて、それを解析ツールにかけるだけでは改善できない」と指摘。「点と点をつないで線にしていく人のノウハウが重要」とし、そのための支援に取り組んでいく方針を示しました。

まずは現場を整流化


会見で「オール自動化より優先すべきは現場の改善」と語る
三菱電機(中国)有限公司董事長兼総経理の富澤克行

富澤は講演後、日本のメディアを前にした会見でも、現場の改善を優先した智能製造が有効なことを強調しています。「中国の製造業は現場が整理されないまま拡大を続けてきました。まずは現場を整流化することが、智能製造の最初のステップではないかと考えています」(富澤)。

また富澤は「現場を整理する中では、人件費に対する考え方を改めることも必要」と指摘。「先進国なら1~2人で済む作業を、中国では5人がかりで行っていたりしており、全体では人件費の効果が出ません。そういう現場では、部分的な自動化システムで十分効果が出るはずです」(富澤)。


会見で「オール自動化より優先すべきは現場の改善」と語る三菱電機(中国)有限公司董事長兼総経理の富澤克行

中国が国を挙げて智能製造を推進する中、中国の製造業は「オール自動化したい」というニーズが根強くあります。ベンダもそのニーズに直接的に応えようと、手っ取り早く情報化や自動化のシステムを提供する傾向にあるようです。しかし中国の製造業が発展してきた過程を考えると、システム導入が先にありきでは効果が十分出るとは限りません。

そのことを見極め、時にはシステムよりも現状のものづくりの仕組み改善というノウハウの提供から支援を始めるのが、三菱電機のe-F@ctoryによる智能製造実現のアプローチです。今回のセミナーを主催したITEIのほか中国工程院など、中国国家機関と三菱電機が密接なパートナーシップを築き上げているのは、三菱電機のアプローチが既に中国のさまざまな製造業で実証されており、信頼を得ているためなのです。

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